暴れゴリラ忍法帖

現役女子高生が日々を綴ります

ピンクドッグ悲劇譚

ピンクドッグとは私が昔飼っていた鶏の名前です。
彼女は毎朝私を起こしてくれ、素敵な朝ごはんも提供してくれる
良い奴でした。

 

しかし、彼女は私の祖父によって、その短すぎる生涯を終えました。祖父はなぜそのような凶行にいったのか、彼女はなぜ殺されなければならなかったのか、今日はそんな一匹の女性に関する話です。

 

当時小学生だった私は、大の肉好きでした。特に脂身には目がなく、牛脂だろうがドリップだろうが構わず啜る、親からしたら将来が楽しみな少年時代を過ごしていました。

 

また、私の家には小さいながら畑があり、毎年四季折々の野菜が植えられていました。畑の世話は祖父が見ており、時折、食べてみたい野菜のリクエストを求められることがありました。肉食獣だった私は、冗談のつもりで「肉を植えてくれ」と祖父にせがんだ記憶があります。

 

1か月後くらいだったと思います、祖父が庭へ掘っ立て小屋を造り始めました。何事と思い庭へ飛びだすと、小屋には大量のヒヨコが可愛らしく歩いているではないですか。その愛らしい姿に私は幼いながらに「博愛」や「友愛」という、今では失くして久しい感情を抱きました。

 

ヒヨコの成長は驚くほど速く、あっという間に立派な鶏へと姿を変えました。私はその中の一匹を「ピンクドッグ」と名付け、特に可愛がってやりました。

 

いつしかピンクドッグにはブルードッグという恋人ができました。ピンクドッグとブルードッグはとても仲が良く、私との遊ぶ時間は次第に減っていきました。嫉妬という感情が芽生えたのもちょうどこの頃です。

 

そんな時、事件が起こりました。ブルードッグがオレンジドッグという他の雌に襲い掛かったのです。しかもオレンジドッグはそのときに妊娠してしまい、我が家では面倒見切れないほど大量の有精卵を産むこととなりました。祖父はヒヨコ達の引き取り手を探すことに必死でした。事態を重く見た祖父はブルードッグを犬小屋へ軟禁し、これ以上の面倒を食い止めました。それはピンクドッグとブルードッグの恋の終わりでもありました。

 

ピンクドッグを取り返した私は、これまで以上の愛情を彼女に注ぎました。ピンクドッグ・オレンジドッグ・イエロードッグを連れ、近所の散歩に出かけたこともありました。

 

しかし、悪夢は突然やってきました。

 

小学校からの下校途中、我が家から一台の軽トラックが出てきました。何となく嫌な予感がしたため、鶏の小屋を確認するため家へ急ぎました。しかし、どれだけ小屋に近づいても、彼女たちの声が聞こえてきません。いつも聞こえる餌や散歩を求める声が聞こえてきません。小屋を見た私は戦慄を覚えました。誰一匹いない小屋の前で事態を飲み込もうとしたのですが、頭と心がそれを拒みます。

 

夕方に祖父が大量の鶏肉を持ってきたときには、もう何が何だかわかりませんでした。

 

祖父は私の言った「肉を植えてくれ」を忠実に守っただけだったのです。真にピンクドッグを殺したのは私だったのです。自分を責めて責めて責め続けても、後悔の念は消えませんでした。

 

私は親と相談し誰のか分からなくなった鶏肉の切れ端を庭へ埋めることにしました。端から見たら狂気の沙汰ですが、当時の私にはこれくらいしかできることはなかったのです。

 

鶏肉パーティーと化した夕餉、私は1つの結論に達しました。彼女たちが私の血となり肉となる、生物にとって究極の愛情とは喰うことなんだ、と。

 

彼女たちは私にそのことを気づかせてくれるために、ここにやってきたのです。今でも鶏肉を見ると、彼女たちと過ごした日々を思い出します。