暴れゴリラ2忍法帖

現役女子高生未亡人が日々を綴ります

ありがとう霊剣山

私には3か月に一度だけ連絡を取る友人がいる。

大学の先輩で、付き合いはもう10年以上になるだろうか。

 

探偵脳を患っている人なら「3か月に一度」というフレーズから流れは読めているかもしれないが、話題はもちろんアニメだ。

 

私はプライベートでは基本的にアニメの話しかしない。

人魚姫が足と引き換えに美しい声を魔女に奪われたように、私もアニメ以外の話題を魔女に奪われてしまっているのかもしれない。

その代わりに得たものにサッパリ心当たりがないため、できればクーリングオフしたい。

 

話を戻すと、私と先輩の3か月に一度のやりとりは4年前から始まった。

先輩から「今期のオススメアニメを教えてほしい」とメールが来たのがキッカケだ。

 

先輩は私より一足先に社会人になっていたが、会社にアニメの話ができる人がいなくて寂しかったらしい。

(後になって聞くと、周囲が「おそ松さん」で盛り上がっている中、一人だけ「霊剣山 星屑たちの宴」というメガトン級のクソアニメに熱をあげていたりしていたらしいため、無理もないことだが…)

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突然の連絡でややビックリしたが、自分の得意分野で頼られるというのは悪くない気分だ。

たった1つの業(アニメ)だけを静かに磨き続けていた男が、ついにその修練の成果を見せつけるときが来たのだから。

男・突撃類人猿、灼熱の瞬間である。

 

そして見事、私は先輩の期待に応えることに成功した。

オススメアニメリストの中にバッチリ「霊剣山 星屑たちの宴」を入れていたのだ(このときは先輩が霊剣山にハマっていることは知らなかった)。

 

この一件で、私は先輩からの信頼を勝ち取ることができた。

もともとそれなりに仲のいい先輩後輩だったとは思うが、「霊剣山の良さを理解する同志」として他にない特別な絆で結ばれた気がする。

(逆に言えば、「霊剣山が好き」というだけで特別な絆が生まれてしまうほどに霊剣山はクソだった)

 

これ以来、私は先輩に毎クールのオススメアニメのリストを送り続けている。

ほかの要件で連絡を取り合うことはほぼないし、直接会ったのは3年前が最後だが、それでも欠かさず送る。

 

私はこの「文通」のような関係が結構気に入っているからだ。

文通には「相手の状態がわからない」という妙味がある。

 

しばらく会っていないから、先輩はスマホだけ持って異世界転生しているかもしれないし、バイオ1のボスみたいに右腕だけ肥大化してるかもしれない。

そういう想像を羽ばたかせながら相手と言葉だけのやりとりをするのは、純粋に相手の精神そのものとコミュニケーションを取っているような気分になる。

ここに文通の面白さがある。

 

霊剣山のおかげで信頼できる文通仲間を得ることができた。

霊剣山がクソアニメで、本当によかった。