母がゴリになった日
私は自分の頭髪についてほとんど関心を持っていません。
ですから、シャンプーのことも「よくわからんけど頭に塗り付けてるヌルヌル」くらいにしか思っていません。
ですが、そのせいで母がSLAMDUNKのゴリになってしまいました。
あれは私が一人暮らしを始めた20歳の春のことです。
一人暮らしは初めてのことだらけ。
シャンプーを自分で購入するのも私にとって初めてのことでした。
実家で暮らしていたときは母が買ってきたヌルヌルを盲目的に塗っていたので、当時の私は頭髪に対する物心が全くついておらず、右も左もわからない状態です。
ですから、私は何も考えずに安売りしていた商品を購入することにしました。
それが頭皮の死神になるとも知らずに…
1週間ほど購入したシャンプーを使ったあとに友人から指摘されて判明したのですが、私が使っていたのはシャンプーではなくコンディショナーでした。
まさかシャンプーじゃないヌルヌルがシャンプー売り場に売っているとは…
私はメダロット1でラスボスの装備がコンビニに売っているのを知ったときと同じくらいの衝撃を受けたのを覚えています。
そういうわけで、私はシャンプーを使わずにコンディショナーだけを使うという、美容に対する意識が一周してしまったセレブみたいな生活を送ることになり、私の頭皮は最終回のガンダム並みにボロボロになりました。
とはいえ、頭皮は死にましたが、個人的にはこれは笑い話の類だと思っています。
世間知らずの坊やだった私の微笑ましい失敗談ですよ。
そう思ったので、実家の母にこの話をしたら、母のゴリ化の引き金になってしまいました。
息子の頭皮が焦土みたいになってしまったのが許せなかったみたいで、母は「これからはリンスインシャンプーを使いなさい。これは命令です。」と告げてきました。
温厚な母にしては珍しく強い口調です。
ですが、私はリンスの効能をよく知らなかったので、「普通のシャンプーじゃダメなん?」と聞いてしまいました。
これがよくなかった。
母は無知蒙昧な息子が言うことを聞かないのに腹が立ったらしく、「いいからリンスインや!」と私を叱ったのです。
その姿は、完全にテーピングを強要するゴリでした。
私には母の後ろにハッキリと集中線が見えました。
母はゴリになってしまうほど私を愛してくれていたのです。
私はこの事件以来、母の言いつけを守りずっとリンスインシャンプーを使っています。
未だにリンスの効能は知りませんが、私にとってリンスインシャンプーは母との絆の証なのです。
母はこれからNPCになったり、りなちゃんになったりと、いい年してキャラ変が激しいですが、それでも母をずっと愛し続けられたのはリンスインの絆があったからかもしれません。
今度のお盆では、実家に帰って母親孝行しようと思います。
またキャラが変わってなかったらいいのですが…