早めに引っ越し準備する奴は鶏肉野郎だ!
会社の寮の退寮期限が迫ってきたため、土日で新しいヤサを探し、契約書にハンコを突くところまで済ませた。
今まで「早めに引っ越し準備する奴は鶏肉野郎だ!」というプロパガンダを行うことで会社の同期たちに先を越されないよう牽制をかけていたのだが、自分が一番乗りで引っ越し準備を終えてしまった形になる。
アイアム二枚舌。
新しい家を契約するにあたり、保証人である父の年収を書類に書く必要があった。
別に構わないんだけど、自分の親に年収を聞くのはかなり緊張した。
実の親の年収というデリケートゾーンに踏み込むのは、そこはかとない背徳感がある。
「親もひとりの人間なんだな」という世知辛さを感じてしまうのだ。
この感情は、両親も性交渉をしているという事実に気づいたときのそれとだいたい同じである。
引っ越し先を決めた話を上司にしたら、「不動産屋はいい物件を隠し持ってて、最初はその物件を出さない。揺さぶりをかけると渋々いい物件を出してくる。」ということを教えてもらった。
逆転裁判みたいなシステムだ。
私は大して検討せずに家を決めてしまったが、もっとLボタンを連打したほうがよかったかもしれない。
会社の後輩が軽く説教されている場面に遭遇した。
なんでも、出張で展示会に行ったのに、絶対に調査しておくべき大手企業の展示を見てこなかったのだそうだ。
後輩は「見てこないといけないなら行く前に行ってくださいよ…」と口答えをしていた。
ザ・口答えってかんじで、なんだか聞いてて嬉しくなる。
私はこういう「いかにもな状況」を見るのが大好きだ。
「いかにもな状況」はたいていの場合フィクションではよく見るけど、現実ではそんなにお目にかかることはない。
だからこそ、(実際はそんなことはないのだが)現実で「いかにもな状況」を見ると、フィクションが現実に逆輸入されたような気分になる。
私はフィクションにおけるベタ展開を好む傾向があるため、現実でもベタが存在するのがわかると嬉しくなるのだ。
うどんがあまり好きではないため、普段は丸亀製麺に行っても親子丼ばかり食べてしまうのだが、肉ぶっかけうどんの「肉4倍盛りできます!」というパワフルな謳い文句に惹かれて注文してしまった。
もちろん肉4倍で注文したのだが、値段も普通に4倍取られたのは痛恨だった。
同じ値段で肉が4倍になると勘違いしていたのだ。
普段のハードボイルドな私ならば、そんなうまい話があるわけがないと気づいただろうが、ほのかに香る年末の匂いが私から冷静さを奪ったのかもしれない。
また、肉を4倍にしているのに、いつもの癖で「かしわ天」まで追加してしまった。
新しい家の契約に伴ってビッグなマネーを動かしたせいで、金銭感覚がバカになっていていけない。