餃子時空の反復横跳び
私は会社の寮に住んでいる。
家賃が安いのはありがたいのだが、高級住宅地のど真ん中という立地はいただけない。
住宅地は飲食店が少ないので、私のような自炊が嫌いな人間にとっては食の楽しみが大いに制限される。
そんな高級住宅地の中に存在する唯一の飲食店が大阪王将である。
普段の町にはオホホと笑いながら犬を散歩させるようなマダムしかいないのだが、大阪王将だけは低所得顔のオッサンで溢れかえっていて安心する(もちろん、私も低所得顔のオッサンの一人である)。
高級住宅地に紛れ込んだ小汚いオッサンたちがゴキブリホイホイのように大阪王将におびき寄せられるのは、何らかの社会実験を思わせる。
大阪王将は最近餃子をリニューアルしたようだ。
正確な文言は覚えていないが、「創業50年、改良を重ねることで今までで一番美味い餃子ができました!」と書かれたポスターが店内に貼られていた。
確かに、以前に比べて餃子がうまくなったような気がする。
大阪王将の独自要素である味噌ダレも美味だ。
しかし、GWごろから大阪王将が「創業50周年フェア」なるものを開催してきたのだが、これが私の中で物議を呼んでいる。
フェア期間中は創業復刻餃子と題して、リニューアル餃子ではなく創業当時の味を再現した餃子が提供されるのだ。
私が言いたいのは、「せっかく50年かけて味を改良してきたのに、どうして味をスタートに戻してしまうんだ」ということである。
今までで一番美味い餃子を食わせてくれよ。
創業者へのリスペクト精神は社内においては重要かもしれないが、それに消費者まで巻き込まないでほしい。
大阪王将の創業者なんて欠片も興味はない。
まぁ、リニューアル餃子も創業復刻餃子も味の違いはわからなかったし、餃子の割引券も貰えたし、実際のところほとんど文句はないのだが。
割引券を握らせておけば低所得のオッサンは文句を言わなくなるということを大阪王将はよく理解している。
これからも我々オッサンたちのオアシスであり続けてほしい。