2クールかけてアイドルの無個性っぷりを描写し続けた少年ハリウッド
4連休はYoutubeで無料配信されている少年ハリウッド最終話完全版を何度も見ている以外に特に書くことはありません。
少年ハリウッドは非常にいいアニメでして、私が見たことのあるアイドルアニメの中ではぶっちぎりナンバーワンです。
私はアイドルアニメに詳しいわけではないので少ないサンプルの中でのナンバーワンではありますが、その作風が異色であるというのは間違いないんじゃないかなと思っています。
(他に見たことのあるアイドルアニメはアイマス関連全部、アイカツシリーズ、プリティーシリーズ、ラブライブシリーズ、うたプリシリーズ、アイドリッシュセブン、アイドル事変、ダイナミックコードあたり)
少年ハリウッドのどこが異色かと言いますと、アイドルたちがみんな普通の少年たちなんですよね。
「俺はどこにでもいる平凡な高校生」みたいな語りで始まるアニメもすっかり減りましたが、少年ハリウッドの面々はマジで平凡でして、「こいつらに比べたら俺のほうがまだ個性的かもしれん」と思わせるレベルです。
顔も設定上はいいはずなのですが、写実寄りなキャラデザなので割と地味な印象ですし、主人公と同じ顔の劇場スタッフがいたりするのでひょっとしたら作品世界でもそこまでイケメンではないのかもしれません。
しかし、そこがいいんですよ。
他のアイドルアニメはステキな男の子女の子がアイドルとして輝く姿が描かれるわけですが、少年ハリウッドのメンバーは「こいつらはアイドルにならないと全然パっとしないんだろうな」と視聴者に確信させてくるんです。
こう書くとキャラをディスっているように聞こえるかもしれませんが、もちろんそんな意図はなく、アイドルの「ファンの願望を投影するキャンパス」という側面を凄く真摯に扱っているということが言いたいのです。
彼らはプライベートでは「シャツの背中にモップをたくさん挿す」という完全に内輪のノリでしかないギャグでゲラゲラ笑ってるくらい平凡なのですが(こういう普通の男子学生同士のコミュニケーション描写の解像度が高すぎる)、ステージの上ではファンたちから輝きをもらうことでアイドルになることができるわけですね。
「ファンがアイドルに夢を見てくれるからアイドルは魅力的になり、アイドル足り得る」というのは作品を通して一貫したテーマでした。
アイドルとは自ら輝きを放つ太陽ではなく、ファンの輝きを反射する月なのであるというアイドル観が根底にあるのはアイドルアニメの中では珍しいのではないでしょうか。
他の作品でも1エピソードとして「ファンありきのアイドル」という考え方を扱うことはありますが、この作品では2クールかけてアイドルの無個性っぷりを描写し続けたので説得力がダンチです。
通常はキャラクターの魅力を引き出すためにアイドルという職業を与えるわけですが、このアニメは全くの逆で、アイドルという職業を描き出すためにキャラクターが配置されているという印象です。
第一話を見たときはアイドルたちのモブ感が強すぎて「こいつらメインキャラだったの!?」とビックリしたものですが、それも意図したものだったのでしょう。
そして、そんな彼らがファンから少しづつ輝きを貰い、アイドルになっていく過程が2クールに渡って描かれ、それらが最終話で結実します。
最終話は観客席から見たライブを全編に渡ってやってくれるのです。
これがめちゃくちゃ泣けるんですよね。
視聴者は舞台裏の彼らを知っているので、彼らの本質が海苔の面白い食べ方選手権をするような普通の少年たちであることがわかっているのですが、観客席から見た彼らは本当にキラキラ輝いてるんですよね。
舞台裏とは別人のようで、それでいてちゃんと彼らの個性も活かしていて、これがファンがアイドルを輝かせるということかというのを、キチンと言葉ではなく映像で理解させてくれるんです。
色んなアニメを見てきましたが、その中でも最高の最終回の一つに数えられると思っています。
というわけで、私は少年ハリウッドがアイドルアニメ最高峰であると信じて疑わないわけですが、
「一話まるまる使って少年ハリウッドが出演する30分の歌番組をノーカットで流す」
「歌番組として成立させるために番組で共演する演歌歌手やポップス歌手の歌もわざわざ作る」
「共演歌手にミス・モノクロームが混じっている」
「少年ハリウッドのダンス作画よりもポップス歌手のダンス作画のほうが気合が入っている」
など、飛び道具的な演出も多く、狂アニメとしてもハイレベルなので気負わずにぜひ見てほしいところであります。